手術を受けて、以前より痛みやしびれは楽になった。
それでも症状が残り、「これ以上は良くならないかもしれません」「しびれは残るでしょう」と言われると、「もう一生このままなのかな」と不安になると思います。
ただし、ここで大切なのは、「手術で変えられる部分に限界があること」と「これから身体が変わる可能性がまったくないこと」は同じではないという点です。
手術によって神経への圧迫や構造的な問題が改善していても、その後の痛みやしびれ、身体の動かしにくさには、神経の回復過程、筋力や活動量、身体をかばう動き、痛みへの不安、睡眠や生活環境など、複数の要素が関係します。
この記事では、手術後に症状が残る理由と、「もう治らない」と言われてもまだ取り組めること、そして当院ではどのような考え方で身体を確認しているのかを説明します。
ここがポイント
「以前とまったく同じ状態に戻れる」と保証することはできません。しかし、痛みやしびれが残っているからといって、今後の痛みの感じ方、身体の動き、歩ける距離、仕事や家事のしやすさまで変わらないと決まったわけではありません。
手術をしても痛みやしびれが完全になくならないことはある
例えば腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの手術では、神経を圧迫している組織を取り除いたり、神経が通る空間を広げたりすることがあります。
このような手術によって脚の強い痛みが軽くなっても、「しびれだけ残っている」「以前より楽だけれど、まだ歩くとつらい」ということはあります。
腰の神経根に対する除圧手術後の経過を調べた研究でも、痛みは比較的早く変化する一方、しびれは痛みよりゆっくり変化する傾向が報告されています。
つまり、「手術後にも症状がある=手術が失敗した」「残ったしびれ=これから絶対に変わらない」と単純に考えることはできません。
長期間圧迫や刺激を受けていた神経では症状が残ることもあり、どこまで回復するかには個人差があります。それでも、時間の経過やリハビリによって変化する症状もあるため、術後のある一時点だけで今後すべてを決めつけないことが大切です。
「もう治らない」と言われたときに確認したいのは、その言葉が何を指しているか
「もう治らない」という言葉は、とても強く聞こえます。
しかし医学的には、「傷ついた神経が完全に元通りになるとは言えない」「画像上これ以上手術で変えられる部分が少ない」「一定のしびれが残る可能性がある」など、さまざまな意味で説明されていることがあります。
ここで分けて考えたいのが、身体の構造そのものと、現在感じている症状や生活機能は同じではないということです。
仮に一部の神経障害が残っていたとしても、
- 身体をかばい続けて硬くなっている部分
- 手術後に低下した筋力や体力
- 歩き方や立ち上がり方などの身体の使い方
- 「動いたらまた悪くなるのでは」という恐怖
- 活動量の低下
- 睡眠や疲労、仕事・家庭での負担
など、これから調整していける要素が残っていることがあります。
そのため、「神経が完全に元通りになるか」だけを回復の基準にするのではなく、今の身体で変えられる部分が残っていないかを確認することが大切です。
諦める必要がない根拠は、手術後にも変えられる要素があるから
腰の手術後のリハビリについて調べた2023年のシステマティックレビューでは、術後の運動療法について、痛みや身体機能の改善に役立つ可能性が示されています。
ただし研究によって方法や結果にばらつきがあり、「この運動をすれば必ず良くなる」というほど単純ではありません。
また、腰椎固定術後のリハビリを調べた研究では、運動だけでなく、痛みに対する不安や動くことへの恐怖なども考慮した多面的なリハビリが検討されています。
ここから分かるのは、手術が終わったあとも、身体機能や日常生活への働きかけには意味があるということです。
手術後も「できること」は残っています
手術によって構造的な問題へ対応したあとも、筋力、体力、動作、活動量、痛みへの警戒、不安、睡眠、生活環境などは変化していきます。「手術が終わったから、あとは何もできない」というわけではありません。
痛みが続くと、身体は無意識に「守る動き」を続けることがある
例えば、手術前に立ち上がるたびに強い痛みが出ていた人を考えてみましょう。
手術後に神経への圧迫が減っていても、「また痛くなるかもしれない」という経験が残っていると、腰を固めたり、片側の脚ばかり使ったり、必要以上にゆっくり動いたりすることがあります。
これは本人が間違った動きをしているという意味ではありません。痛みから身体を守ろうとする自然な反応です。
しかし、この状態が長く続けば、動く範囲が狭くなり、筋力や体力が低下し、以前なら問題なかった活動でも疲れやすくなることがあります。
そこで大切なのが、「痛いから全部動かさない」「怖くても一気に動かす」という二択ではなく、現在できる動きを確認しながら、少しずつ身体を使える範囲を広げていくことです。
痛みは手術した場所だけで決まるわけではありません
国際疼痛学会(IASP)では、痛みは生物学的な要因だけではなく、心理的・社会的な要因からも影響を受ける個人的な体験だとされています。
これは「痛みは気持ちの問題」という意味ではありません。
実際に感じている痛みに対して、身体の状態だけでなく、その人が置かれている状況まで含めて考えるということです。
例えば手術後であれば、
- 神経や筋肉、関節など身体の状態
- 「また悪くなったらどうしよう」という不安
- 仕事復帰への焦り
- 長期間動けなかったことによる体力低下
- 痛みのために眠りが浅くなっている状態
- 家事や育児を休めない生活環境
などが重なっていることがあります。
こうした考え方を「生物心理社会モデル(BPSモデル)」といいます。
手術した場所だけを見続けるより、「今の生活の中で何が症状に影響しているのか」を広く確認した方が、その人に残されている選択肢を見つけやすくなります。
当院では「神経を再生させる」とは説明しません
手術後にしびれが残っている方に対して、整骨院の施術によって傷ついた神経そのものを再生できると説明することは適切ではありません。
当院が確認するのは、現在の身体にまだ変えられる要素が残っていないかということです。
まず、いつどのような手術を受けたのか、手術によって何が変わったのか、現在どのような動作で困っているのかをお聞きします。
そして、例えば、
- 立ち上がるときにどこへ力が入っているか
- 前にかがむ、身体をひねるなどの動き
- 左右で動かしやすさに違いがあるか
- どれくらい歩くと症状が出るのか
- 症状を怖がって避けている動作がないか
などを確認していきます。
施術では術部へ強い刺激を加えることを目的とせず、手術からの経過や現在の状態を考慮しながら、ソフトな刺激を中心に身体全体を確認します。
さらに施術前後で実際に身体を動かし、「動かしやすさはどうか」「いつもの動作はどう感じるか」を一緒に確認することを大切にしています。
施術だけでなく「できる動き」を取り戻すことも大切です
手術後に症状が長く続いている場合、ベッド上で施術を受けることだけが目的になると、日常生活での変化につながりにくいことがあります。
必要に応じて、身体の状態に合わせた簡単な運動や、普段の動作の工夫についても一緒に考えます。
「何kg持てるようになるか」よりも、最初は「5分歩けるようになった」「椅子から立つときの怖さが減った」「スーパーへ行けるようになった」といった、その人の生活に必要な変化を確認することが大切です。
「痛みがゼロかどうか」だけで回復を判断しないことも大切
長く症状が続いていると、どうしても「痛みが0になったか」「しびれが完全になくなったか」だけを見てしまいます。
もちろん症状そのものが軽くなることは大切です。しかし回復を見る指標は、それだけではありません。
例えば、
- 歩ける距離が伸びた
- 座っていられる時間が長くなった
- 朝の着替えがしやすくなった
- 仕事後のつらさが以前より少ない
- 痛みが出ても必要以上に怖くなくなった
- 趣味や外出を再開できるようになった
こうした変化も、大切な回復の一部です。
「完全に症状がなくならなければ意味がない」と考えてしまうと、本当は増えている「できること」を見落としてしまうことがあります。
「もう治らない」という言葉だけで、今後の生活まで決めないでください
神経や身体の状態によっては残る症状もあります。それでも、「どこまで歩けるか」「何を怖がらずにできるか」「仕事や趣味へどこまで戻れるか」には、まだ変化する余地が残っていることがあります。
手術後の痛みやしびれが残っていても、その段階でご相談いただけます
「手術までしたのだから、もう整骨院で相談することはないのでは」と考える必要はありません。
手術によって症状はかなり楽になったけれど、しびれだけが残っている方、動くとまだ痛みが出る方、仕事や家事への復帰がうまく進まない方などもご相談いただけます。
手術名やこれまでの経過が分かれば参考になりますが、すべてを整理してから来院する必要はありません。
「なぜまだ痛いのか分からない」「どこまで動いていいのか不安」「これから何をしたらよいのか分からない」という段階でも、今困っていることをお聞きしながら一緒に整理していきます。
東大阪市のひがし整骨院・八戸ノ里ここから整骨院・長瀬ここから整骨院では、手術をした場所だけを見るのではなく、身体の動き、生活で困っていること、痛みに対する不安、活動量なども含めて確認しています。
「もう治らないと言われたから諦める」のではなく、「今の身体で、まだ変えられるものは何か」を一度確認してみる。
それも、手術後の身体と向き合う一つの選択肢です。
注意してほしいポイント
手術後に新しく強い麻痺が出た、明らかな筋力低下が急速に進んでいる、排尿・排便の急な異常や股周囲の感覚低下がある、高熱を伴って状態が急に悪化したなどの場合は、通常の術後症状として判断せず、速やかな医療機関での確認が必要です。
参考情報
- International Association for the Study of Pain(IASP). IASP Terminology - Pain. 痛みは生物学的・心理的・社会的要因から影響を受ける個人的な体験であることが示されています。
https://www.iasp-pain.org/resources/terminology/ - National Institute for Health and Care Excellence(NICE). Low back pain and sciatica in over 16s: assessment and management(NG59). 運動療法や、必要に応じて身体面と心理面を組み合わせたアプローチなどが示されています。
https://www.nice.org.uk/guidance/ng59 - Manni T, Ferri N, Vanti C, et al. Rehabilitation after lumbar spine surgery in adults: a systematic review with meta-analysis. Archives of Physiotherapy. 2023;13:21. doi:10.1186/s40945-023-00175-4.
PubMed - Huang P, Sengupta DK. How fast pain, numbness, and paresthesia resolves after lumbar nerve root decompression: a retrospective study of patient's self-reported computerized pain drawing. Spine. 2014;39(8):E529-E536. doi:10.1097/BRS.0000000000000240.
PubMed - Cheng H, Liu J, Shi L, Hei X. The Rehabilitation-Related Effects on the Fear, Pain, and Disability of Patients With Lumbar Fusion Surgery: A Systematic Review and Meta-Analysis. Neurospine. 2023;20(1):278-289. doi:10.14245/ns.2245056.528.
PubMed
柔道整復師・東 剛士が監修しています。
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私たち「ひがし整骨院/ここから整骨院グループ」では、東大阪市・大阪市を中心に、身体の状態や日常生活での負担を確認しながら、一人ひとりに合わせた施術を行っています。
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